History of Preamplifier 〜Mark Levinsonの軌跡

ハイエンド・オーディオという新しいジャンルを確立した米国を代表するブランド「マークレビンソン」。その歴史ある設計思想は、現在も脈々と受け継がれ、常にエポックメイキングな製品を産み出し、世界中のオーディオファンからリファレンスシステムとして高い評価を受け続けています。

1973〜1977

LNP-2(1973)

創業者・マークレビンソンは当時プロオーディオ用として開発されたばかりのBurwen社の高性能オペアンプ・モジュールに目をつけ、 これを主要回路として用いたモジュール形式のローノイズ・プリアンプ “LNP-1”を開発、1973年のAESへ出展すると発表します。しかし大きな二つのVUメーターを持つ19"ラックマウント式のこの巨大な業務用プリアンプは、日の目を見ることはありませんでした。

代わりにこの年AESに出展され世界中の注目を集めたのが、VUメーターを小型化し、高さをLNP-1の約1/2に抑え、実用的なサイズにリメイクされた“LNP-2” だったのです。LNP-2は、当時群を抜く高性能プリアンプでした。Burwenの高性能モジュール、プロ用音響機器から流用された超高精度ボリューム、そしてその類まれな高S/N性能がもたらす静寂感は他の追従を許さず、世界中のオーディオメーカーがこぞってこれを研究したと言われています。

LNP-2はハイエンド・オーディオという新しいジャンルを確立したという点でも、まさにエポックメイキングな製品でした。

JC-2(1974)

1974年、レビンソンはBurwen社のモジュールに替えて自社開発のオリジナル・モジュールを搭載したスリム設計の「フラット・プリアンプ」“JC- 2”を発表します。設計者のJ.Curlはレビンソン氏と親交の厚いエンジニアの一人で、既に彼の設計によるJC-1というMCヘッドアンプが製品化されていました。JC-2はLNPの特徴であったVUメーターや3バンド・トーンコントロールなどの機能を省き、徹底したシンプル化により更なる高音質化と共にロープロファイル化を図った、後のマークレビンソン・プリアンプの基礎となったモデルです。

LNP-2L、
ML-1L(1977)

LNP-2もBurwen社製からMLオリジナル・モジュール仕様に変更され、1977年には医療機器や物理学測定器などの特殊な用途に用いられていたCAMAC方式の接続端子“LEMOコネクター”による入出力端子を装備した“LNP-2L”へと進化します。

この年、JC-2をベースとしJC-1MCモジュールを内蔵させることで、当時ハイエンド市場で主流となりつつあったMC型カートリッジへの対応を図った“ML-1L”が登場します。

1979〜1981

ML-6(1979)

1979年、レビンソンはこれまでの常識を覆したモノラル構成のプリアンプ“ML-6” を発表します。JC-2以来テーマとしてきたシンプル化=高音質化を極限まで追求したこのモデルは、電源を含めシャーシーから左右チャンネルを分離独立させた完全なモノラル構造とし、3系統のソース切り替えとボリュームコントロールのみという徹底したシンプル化によって、操作性を犠牲にしてまでも音質を徹底追及しようと試みた究極のプリアンプです。その無限大とも謳われたセパレーションによって生み出される広大なサウンドステージは、プリアンプの音響評価に新たな基準を創り上げたと言っても過言ではないでしょう。

しかし、音質と操作性の両立の重要性と言う、マークレビンソンに新たなテーマを投げかけたモデルでもありました。

ML-7L(1980)

続く1980年、これまでのモールド・モジュール型回路構成に性能向上の限界を感じ、ML-1Lの発展型としてカード形式のモジュールを組み込んだ“ML-7L”を発表します。ML-7Lはマークレビンソンのスタンダード機として広く市場に受け入れられました。

マークレビンソンは世界中のオーディオマニアから羨望の的とされるブランドへ成長しまし

ML-6AL、
ML-10L(1981)

翌1981年、ML-7Lに搭載されたカード式モジュールを用いることで更なる音質向上を図ったモノラル・プリアンプ“ML-6AL”が新たなフラッグシップ・モデルとして登場しています。同時にこの年、マークレビンソン・プリアンプとして始めて、AC電源を本体シャーシー内に組み込んだ“ML-10L”を発表しています。

ML-10Lはカードモジュール形式を採らず、モジュール技術で培った回路フィロソフィーを一枚のメイン基板上に展開したワンボード構成であることなど、MLプリアンプの歴史上新たなチャレンジを試みた製品でした。

1982〜1990

ML-12L(1982)
/ ML-6BL、
ML-7AL(1986)

さらに1982年には、同時発売のパワーアンプML-11Lから電源を供給するという画期的な給電方式とワンボード回路構成を採った“ML-12L”を発表しています。

MLプリアンプは常に新しい電源設計と回路構成の在り方を模索しながら進化して来たと言えるでしょう。

1984年、新生マドリガル・オーディオ・ラボラトリーズに生産拠点が移り、翌1985年にはパーツの見直しにより更なる性能向上を図った“ML-6BL”と“ML-7AL”を発表します。

  • ML-12L
    ML-12L
  • ML-6BL
    ML-6BL
  • ML-7AL
    ML-7AL
No.26L(1988)

そして1988年、新体制下における初のオリジナル製品、“No.26L”が登場します。これまでのカード式モジュール形式の殻を破り、オプション基板を除く主要回路をワンボード構成とし、広い基板面積を有効に活用して二つのモノラル回路をシンメトリーに搭載する、初の「デュアル・モノラル・コンストラクション」を採用しています。

JC-2/ML-1Lに始まったスリムな筐体デザイン、ML-6からML-6BLへと連なるモノラル・プリアンプにも迫る高いチャンネル・セパレーション、全段ディスクリート構成のオーディオ回路、そして、より強化、洗練された電源部など、No.26Lはマークレビンソンのプリアンプ技術の集大成であり、また高音質と機能性の高い次元での融合という、LNP-2以来のテーマにも挑んだML中期の代表的なプロダクツです。

No.28L(1990)

1990年、全てのオーディオ回路をバランス構成とし、コモンモード・ノイズの低減を図った画期的回路デザイン“BI-BO”(Balanced In - Balanced Out)の概念を取り入れた最初のプリアンプ、“No.28L”を世に送り出します。No.28Lはボリューム回路のバランス化を果たすために、通常の機械式可変抵抗型ボリュームに頼らず、特殊なオプティカル・エンコーダーをボリューム読み取り機構として用い、抵抗素子を電子的に切り替えるロジック・コントロールのステップアッテネータ・ボリュームを搭載していました。

後のMLプリアンプに大きな技術的遺産を遺すことになるこの先進のボリューム機構は、まだ十分なオペレーション技術を伴わない早熟な技術故、すでに熟成された技術でプリアンプの頂点を極めたNo26Lの影で十分な評価を得られませんでした。

しかし、ボリュームの精度と音質、操作性に徹底的にこだわるその姿勢こそ、創立以来マークレビンソン・プリアンプに流れる伝統であり、レビンソン・アンプを他から隔絶した存在たらしめる大きな魅力の一つと言えます。

1991〜1997

No.26SL(1991)

1991年、アンプ史に残る傑作プリアンプ、“No.26SL”が登場します。No.26Lの洗練された回路構成はそのままに、優れた誘電率で理想の絶縁素材と謳われたテフロンをプリント基板に用いることで、優れたダイナミクス表現とスムーズな音色、そして、まさしくモノラル・アンプを思わせる広大なサウンドステージを獲得。

No.26SLはハイエンド・オーディオ市場から絶大な評価を受け、世界中で「プリアンプのリファレンス」と称されました。

No.38L(1993)
/ No.38SL(1994)

1993年、既にオーディオ界はアナログ・ソースからCDを始めとするデジタル・ソースへと主流が移り、プリアンプの役割も昇圧回路からラインレベル・コントローラーとしての役割へと様変わりしていました。

レビンソンはプリアンプからフォノ回路を省きラインアンプ専用仕様とすることで電源にまつわる呪縛から遁れ、電源部を筐体内部へ組んだワンシャーシ構造を採ります。そして、先に発売されたNo.28Lの技術要素をさらに高め、より洗練された回路構成と確実な操作性を盛り込んだフルバランス・オペレーション方式のプリアンプ、“No.38L”を発売します。

No.38Lでは、D/A変換素子として使われる抵抗ラダー型DACの内部回路構成がロジックコントロールによって自由に定数を組み替えできる超高精度抵抗素子の集合体であることに着目し、これをボリューム素子として用いることで究極の調整精度を No.38L実現しています。メインボリュームのみならず、バランスやレベルトリムまですべて単一回路によって行うことで、シグナル・パスを短縮、簡素化し、音質改善を果たしながら機能性をも充実させています。このシンプルで高性能、多機能なDAC方式のボリューム・コントロール機構は、No.38Lの成功によって世界中のオーディオシステムの音量調整機能に大きな影響を与えました。

翌94年にはNo.38Lのオーディオ基板を新素材シアン化エステルの四層基板に置き換え、著しい音質向上を果たした上級機種“No.38SL”を投入します。シアン化エステル基板の持つ優れた誘電率を活かし、さらに基板を四層化することにより電源と信号ラインをそれぞれ独立、最短化し、伝送インピーダンスを著しく低減させることに成功したこの“Sバージョン”の技術は、“バージョンアップ”という手法によりノーマル仕様のユーザーへも恩恵を与えると同時に、パワーアンプを始めとする他のMLプロダクツにも応用されて行きます。

No.380SL
/ No.380L(1997)

1997年には、急速な技術革新によって高音質化を果たした最新集積回路をデバイスとして用い、高品質パーツの投入によって音質を向上させた“No.380L”/“No.380SL”を市場に投入します。それぞれNo.38L/No.38SLから数十箇所に渡るパーツ変更を受けたこのアンプは世界中から高い評価を受け、過去のレビンソン・プリアンプを上回るヒットモデルとなりました。

1999〜TODAY

No.32L(1999)

1999年、自らリファレンスの名を冠した初のプリアンプ“No.32L”が登場します。

この記念すべきモデルは、総ての妥協を廃すことで至上の音質性能を実現する、マークレビンソンのリファレンス・ラインの一員として設計されました。このため、過去のレビンソン・アンプの持つ総ての技術要素を継承しながら、さらに最新の技術と最高の素材を融合したまさに究極のアナログ・プリアンプです。

アルミブロック削り出しの電源ボックスにリ・ジェネレーション電源とロジック・コントロール回路を搭載し、アルミダイキャスト成型のオーディオ用ボックス内にフルバランス・オペレーションのモノラル回路を左右シンメトリーに搭載。ボリューム回路にはディスクリート構成の超高精度レジスター群をロジック回路でコントロールすることで、究極の精度と音質を実現したステップアッテネーターを採用しています。また、オーディオソースとして再び注目の集まっているアナログ・ディスクに対応し、フルバランス・オペレーションのMC/MMフォノイコライザー・モジュールもオプションで用意され、本体に組み込むことができます。

No.32Lは文字通りプリアンプのリファレンスとして、オーディオ界に君臨し続けることでしょう。

No.320S
/ No.326S(2004)

2003年、マークレビンソンはその生産拠点をコネチカット州からマサチューセッツ州へ移しました。そして2004年、この新工場からリファレンス・プリアンプNo.32Lの技術を継承した初のプリアンプ“No.320S”と“No.326S”を送り出します。

両機には、No.32Lと同じArlon N-25基板を採用した究極のボリューム機構と、オペレーションシステムが搭載されています。また、No.326Sではメインオーディオ基板にもこの Arlon N-25プリント基板を用いることで、さらに深く厚みのある音色と広大なサウンドステージを獲得しています。No.320S/N0.326Sは、 No.38ファミリー同様電源内蔵型のコンストラクションを採っていますが、No.32L譲りのフルバランス・オペレーションのフォノモジュールを組み込むことができます。このため、高い安定度と共にクリーンで静寂性の高い新しい電源回路を開発し搭載しています。さらにこれをシールドカバーで蓋いオーディオ回路と分離独立させることで、内蔵型ながらNo.32Lのセパレート電源/コントロールシステムに迫る低雑音設計となっています。

No.320SとNo.326Sは伝統と先進性を融合させた、マークレビンソンの次代を担う主力プリアンプとして市場に投入されます。No.32Lと共に、「プリアンプのマークレビンソン」としての評価をさらに世界中に広めて行くことでしょう。

  • No.320S
    No.320S
  • No.326S
    No.326S